遺品整理の開業に、国家資格は要りません。
ただ、遺品の中の貴金属やブランド品を買い取って売るなら古物商許可が、家庭の不用品を運ぶなら市町村長の一般廃棄物の許可が、それぞれ別に要ります。
この記事は、遺品整理の会社を始める人、すでにやっていて買取を足したい人に向けて、許可、儲かる仕組み、貴金属とブランド品の値付け、お客様ともめない見せ方をまとめました。
買取に慣れていない会社が、品物の真贋を断定する必要はありません。
この記事でも、「偽物」ではなく、「当社の査定基準で基準外」という言い方で書きます。
1遺品整理を始める時に要る許可
遺品整理の仕事は、あらかじめ決まった資格を取らなくても始められます。
要る許可は、何をするかで決まります。
| やること | 要る | 先に |
|---|---|---|
| 遺品整理の作業だけ | 国家資格は無い | 遺品整理士は民間の資格。法律で決まった要件ではない |
| 貴金属・ブランド品・骨董などを買い取って売る | 古物商許可 | 営業所を管轄する警察署に申請する。手数料は19,000円、審査は40日が目安 |
| 家庭の不用品を、料金をもらって集めて運ぶ | 市町村長の一般廃棄物収集運搬の許可 | 新規の許可を出していない市町村もあるとされる。その市町村の窓口で確かめる。持っていない時は、許可を持つ会社と提携する |
出典:古物営業法 第3条、廃棄物処理法 第7条第1項(e-Gov法令検索・2026年11月4日に確認)。手数料と日数は、滋賀県・京都府の審査基準による目安(古物商許可の取り方の記事を参照)。
家庭の不用品を運ぶ許可は、古物商の許可では代わりになりません。
無許可で行うと、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、またはその両方です(廃棄物処理法 第25条第1項第1号)。
自治体の中には、遺品整理の会社に合わせた許可を作っている例があります。
久留米市は、自分が請け負った遺品整理で出る家庭のごみの収集運搬に限った、新規許可の要項を出しています(令和4年度の要項。許可は2年間で、更新できる)。
事務所に固定電話・机・看板があること、運搬車を置く車庫があること、一般廃棄物の実務管理者講習を修了した人がいることなどが、要件に書かれています。ほかに、古物商の許可を持つこと、市内で遺品整理業を3年以上続けていることなども、申請の要件です。要項の申請の受け付けは、令和5年1月の約3週間だけでした。
出典:久留米市「遺品整理時に発生する一時多量ごみに限定した収集運搬業事業者の新規許可に係る要項」(2026年11月4日に確認)。今も受け付けているかは、市に確かめてください。ほかの市町村に同じ制度があるとは限りません。
許可の取り方古物商許可の2遺品整理は儲かるのか:買取を足した時の収入の形
遺品整理が儲かるかどうかは、数字で一律には言えません。
きつい仕事で、依頼の数にも波があるからです。
ただ、収入の形は決まっています。
| 収入の | 中身 | 気をつける |
|---|---|---|
| 作業代 | 人数・日数・運搬・処分にかかる費用をもとに決める | 安い見積もりで受けて、あとで追加の費用を求めると、トラブルになる |
| 買取額 | 仕分けで見つけた、値段のつく品を買い取る | 古物商許可が要る。売り先がないと、在庫になる |
| 処分の | 売れた分だけ処分する物が減り、回収にかかる費用も下がる | 値段のつかない物は、これまでどおり処分の費用がかかる |
出典:佐野真の整理。数字の例は、作り物になるので載せません。
お客様から見れば、買取が入ると、片付けの費用が全体で安くなります。
会社から見れば、お金をいただけるのは買取の部分です。
お客様の困りごとは片付けにあり、買取はそこに足す仕事、という順番です。
私が見た実家じまいの現場では、片付けの作業は提携している別の会社が行いました。
自分たちは、見積もりと買取に集中する形です。
自社で作業をする会社は、買取の品を探す時間も、人数と日数に入れておきます。
3値段がつく物、つかない物
遺品の中で、値段がつきやすい物とつきにくい物は、おおまかに分かれます。
お客様は、どれが売れて、どれが処分になるか、分かりません。
先に表で見せておくと、説明が短くなります。
| 品物 | 値段の | 理由・注意 |
|---|---|---|
| 貴金属・宝石 | つきやすい | 刻印と重さで、買取の目安が出る。色のついた宝石は専門の機関でないと判断できないことがある |
| ブランド品(バッグ・時計・服) | つきやすい | トップブランドは二次流通でも値段がつきやすい。百貨店やセレクト系の服は、買う時は高くても、二次流通では安くなりやすい |
| カメラ・レコード・管楽器 | つくことがある | デジタルカメラ、管楽器(サックスなど)は値段がついた。レコードやCDは、高くはつかない |
| 骨董・掛け軸・茶器 | 作家しだい | 有名な作家なら値段がつくこともある。木箱入りの茶器や掛け軸は、見た目より値段がつきにくい |
| 着物 | つかないことが多い | 「着物の強化買取」とうたう店はあるが、お客様が期待するほどの値段にならず、がっかりされることが多い |
| 毛皮 | 下がっている | 買った時の10分の1、20分の1もつかないと思ってもらう。普段の買取は、ほぼできないと考える |
| 人形 | 買取できない | 処分や供養の相談になる |
| 家具・家電 | ほとんどつかない | 家電は5年以内の新しいものが中心。家具も、有名なブランドでないと値段はつかない。処分費がかかると思ってもらう |
| 遺品の服 | ブランドしだい | ブランドの付いた服は売りやすい。高齢の方にも幅広い年代にも人気のあるブランドがある |
出典:佐野真の現場の経験(買取店での査定と、実家じまいの現場)。値段は品物の状態と時期で変わります。ここに書いた以外の品物は、個別に確かめます。
「高価買取」「強化買取」という言葉だけでは、本当に値段がつくかは分かりません。
「高価買取」「強化買取」という言葉は、家にうかがうきっかけとして使われることもあります。頼む前に、品物を見たうえで値段を言ってくれるか、書面をもらえるかを確かめます。
お客様に伝えるときは、品物を見たうえで、値段がつかないものは、つかないと先に言います。
自社がお客様の家で買い取る場合は、特定商取引法の訪問購入にもあたります。頼まれていない勧誘の禁止(第58条の6)、書面の交付、書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフ(第58条の14)、その間はお客様が引き渡しを拒めること(第58条の15)が決まっています。対象外の物品もあるので、始める前に消費者庁や経済産業省の案内で確かめてください。
値段がつかない物も、まとめて海外に回ることがあります。
輸送費がかかるので、買取はできませんが、ごみにせず、使う人に渡る道はあります。
これがリユースの面白いところです。
4貴金属・ブランド品の値付けの考え方
遺品整理で貴金属が出てきた時、買取の値段の決め方は、重さと刻印で考えます。
| 見る | 中身 |
|---|---|
| 刻印 | K18・K14・750・585・K24など。純度の目安になる |
| 重さ | お客様の目の前で量る。グラムが正しいことを見せるため |
| 相場 | その日の金の相場をもとに、重さと純度から買取の値段を計算する |
| 石 | ダイヤの1カラットは、大きさでなく重さで0.2グラム。色石は専門の機関でないと難しい |
出典:佐野真の現場の経験。金の買取の値段は、重さ×その日の単価×純度の考え方で出ます。単価は日々変わるので、数字の例は載せません。
刻印が入っていれば、金かどうかの見当はつきます。
ただ、刻印だけで決めず、迷ったときは、その場で値段を言わずに、専門の機関や専門業者に聞きます。
ブランド品の真贋は、会社として断定しません。
見た結果は、「当社の査定基準で基準内」「基準外」と伝えます。
私は「基準外です」と伝えて、もめたことは一度もありません。
偽物かどうかの判断は、そもそも買取店にはできないことだからです。
迷った品は、預かり書を書いてもらって預かります。
預かる前に、なぜ預かるか、連絡の方法、何日以内か、の3つをその場で話します。
専門業者に写真で聞く方法もあります。
高額の品ほど、間違えたときの痛手が大きくなります。1人の目だけで決めない方法もあります。
5相殺のもめごとを防ぐ伝え方
遺品整理で、一番気をつかうのは、お金とご家族の気持ちです。
| 場面 | 伝え方・動き |
|---|---|
| 見積もりを出す | 作業代と買取額を別の行にして見せる。差し引きだけを見せない |
| 買取の値段を伝える | 金額だけを言わない。何を見て、どういう根拠でその値段にしたかを話す |
| 通帳や現金が出てきた | しっかりお客様に伝える。片付けの途中で出てくることはよくあり、驚かれることが多い |
| 処分に迷う物(仏壇・人形など) | 供養を扱う会社は、捨てにくい物について、こちらから提案することもある |
| ご家族の話がひっくり返った | 私たちは交渉しない。ご家族の中で決めてもらう |
出典:佐野真の現場の経験。通帳・現金・形見は、買取ではなく、お客様にお返しする物です。
船橋市は、無許可の業者が作業料と称したり、ほかの有価物と相殺したりして、回収料を取られていると分かりにくくなる例に注意を呼びかけています(令和4年2月28日更新・2026年11月4日に確認)。見積書で作業代と買取額を分けるのは、買取額を正しく示すためです。家庭の不用品の運搬や処分を作業代に入れるときは、一般廃棄物の許可を持つ会社が行う分に限ります。
親世代と子世代では、物への考え方が違います。
親世代は、物があふれていない時代に育ったので、物をためます。
子世代は、物があふれた時代に育ったので、ためません。
「使わないから捨てよう」と「まだ使うかもしれない」で、口論になることがあります。
お互いの考え方を分かった上で話さないと、進みません。
売る権限があるのは誰か、遺品の持ち主は誰か、という点は、法律の判断が入ります。
ご家族の間で決めていただき、判断に迷うときは、弁護士や司法書士に確かめるようご案内します。
6買い取った後の売り先
買い取った品は、売らなければお金になりません。
遺品整理の会社が、売り先を持っていないために、近くの買取店に持ち込み、一般のお客様と同じ扱いになっていることがあります。
業者として売れる先を持てば、値段が上がるかもしれません。
| 持ち方 | 向く |
|---|---|
| 自分で売る | 値段が見通せて、点数が少ない品。撮影と出品の手間がかかる |
| 1社に売る | 手間を減らしたい時。値段はその1社が決める |
| 何社かに写真で値をつけてもらう | 目利きに自信のない品、種類がばらばらの品。値段を並べて選べる |
出典:佐野真の整理。詳しい比較は、業種ごとの地図の記事に書きました。
専門業者は、その商材に強い会社なら、即金で買い取ってくれることがあります。
ただ、大きな傷みがあれば減額されます。
悪いところを隠して出すと、減額になり、お互いに遅くなります。
写真と一緒に、傷みや欠けは、正直に伝えておきます。
お任せくんを使う場合の費用は、月額6,980円(税別・ベータ版の価格・先着30店で2027年6月30日までの申込)です。
×12か月で83,760円、約8.4万円です。依頼者には成約の手数料がかからず、代金の振込は1回380円(税別)です。
ずっとこの価格とは限らず、見直す時は30日前に知らせがあります(2026年11月4日に確認した公開ページによる)。
許可がない会社は、先に古物商許可を取り、取れたらお任せくんに登録します。登録には、許可番号と営業所の住所が要ります。
売り先の比較買取店の7よくある質問
遺品整理で遺品を買い取るのに、古物商許可は要りますか?
貴金属やブランド品などを買い取って売るなら、要ります。
作業だけを請け負い、品物をご家族が処分する場合は、古物を買わないので要りません。
無許可で営業すると、3年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(古物営業法 第31条)。
遺品整理は儲かりますか?
一律には言えません。
収入のもとは、作業代と買取額で、買取が入ると、お客様の片付けの費用が全体で下がります。
安い見積もりで受けて、あとで追加の費用が出ると、トラブルになります。
遺品整理士の資格は、要りますか?
法律で決まった要件ではありません。
遺品整理士は民間の資格です。
依頼者に信頼してもらう材料や、知識を学ぶ機会として使う人がいます。
一般廃棄物の許可を持っていないと、遺品整理はできませんか?
作業はできます。
家庭の不用品を集めて運ぶ部分は、市町村長の許可を持つ会社と提携する方法があります。
許可を取れるかどうかは市町村で違うので、その市町村の廃棄物の窓口に確かめます。
遺品の貴金属は、いくらで買い取れますか?
重さと刻印で目安が出ます。
金は、重さ×その日の単価×純度で考えます。単価は日々変わります。
色のついた宝石など、判断が難しい物は、専門の機関や専門業者に聞きます。







