「売りたい家の中に、家具も荷物もそのまま残っています」
不動産会社の担当者なら、一度は聞いたことのある相談です。
付き合いのある片付け業者を紹介して終わりにする会社もあります。
ただ、その荷物の中には、値段のつく物が混じっていることがあります。
この記事は、不動産会社が売却前の残置物を買取に回す時の順番を、同意・許可・見積書の書き方に分けて説明します。
書いたのは、買取の現場で長く働いてきた私です。法律の部分は、条文と国の資料で確かめた内容だけを載せています。
1残置物は誰の物か|同意をもらう相手
売却前の家の中にある家具や荷物は、売買の契約書に別の定めがなければ、売主の物です。
買主が決まっても、契約書で売主が所有権を手放すと決めていなければ、買主が勝手に動かすことはできません。
不動産会社が動かす前に、持ち主から同意をもらいます。
| 場面 | 同意を | やっておく |
|---|---|---|
| 売主が | 売主本人 | 残す物、手放す物、売ってよい物を、書面で確認する |
| 相続した | 相続人全員 | 相続財産は相続人の共有になる(民法第898条)。全員の同意を書面でそろえる |
| 遺産分割が | 取得した相続人 | 遺産分割協議書など、結果が分かる書類を見せてもらう。家財まで含むかも確かめる |
| 相続人が | 勝手に動かさず、専門家へ | 弁護士や司法書士に相談する。家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人の手続きになることもある |
出典:民法 第898条・第251条(e-Gov法令検索・2026年11月4日に確認)。日本司法書士会連合会の資料(環境省 リユース促進に向けた懇談会 第2回・令和7年3月14日)では、司法書士の業務に相続財産清算人などが挙げられています。個別の判断は弁護士・司法書士に確かめてください。
相続の物件では、家族の中で話がまとまらないことがあります。
親御さんは手放してよいと言っているのに、後から息子さんが入ってきて、話がひっくり返ったこともあります。
私がいた会社では、そうなったら、こちらから交渉はしません。家族の中で決めてもらうのが決まりでした。
不動産会社も同じで、全員の同意が書面でそろうまで、荷物には手を付けないのが安全です。
2古物商と一般廃棄物|2つの許可は別物
残置物の相談には、「買い取る」「運ぶ」「捨てる」の3つの仕事が混ざっています。
それぞれに必要な許可やルールが違います。
| やること | 必要な | 管轄 |
|---|---|---|
| 売主から | 古物商の許可。相手の確認と帳簿の記載も必要(古物営業法 第3条・第15条・第16条) | 営業所のある都道府県の公安委員会(警察) |
| 買い | 無償か引取料をもらって引き取った物を、修理・再生などして売るだけの店は、対象外とされる例がある(警察庁の通達) | 警察署の生活安全課に確認 |
| 家庭の | 一般廃棄物処理業の許可、または市町村からの委託。産業廃棄物や古物商の許可では足りない | 市町村 |
| 売主の | 特定商取引法の訪問購入のルール(勧誘の要請、書面の交付、8日のクーリング・オフ) | 消費者庁・都道府県 |
出典:古物営業法(e-Gov法令検索)/警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」令和8年5月14日 第3の4(1)/環境省 リーフレット「解体工事等を発注する建築物の所有者等・建設工事元請等のみなさまへ」(平成30年6月)/消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問購入(いずれも2026年11月4日に確認)。
押さえておく点は2つあります。
- 買い取って売るなら、古物商の許可が要る古物営業は、営利の目的で同種の行為を繰り返すことです。副業や臨時の仕事でも、営業にあたります(警察庁の通達)。一方、無償や引取料をもらって引き取った物を修理・再生などして売るだけで、買い取りをしない店は、通達で対象外とされています。
- 運ぶ、捨てる作業は、古物商でも産業廃棄物の許可でもできない環境省のリーフレットには、家庭の残置物は一般廃棄物で、市町村の許可を持たない業者が処理することは法律で禁じられている、と書かれています。罰則は5年以下の懲役か1000万円以下の罰金で、両方が科されることもあります。
作業代から買取額を差し引いて請求する形が、古物の買い取りにあたるかどうかは、通達に直接の記載がありません。
迷う時は、営業所を管轄する警察署の生活安全課に、見積書の見本を持って聞きます。
3売却前の残置物は、この順番で動く
空き家内の残置物を整理する流れについて、日本司法書士会連合会は、次の順番を示しています。
- 現金、証書類、写真・アルバム、手紙を選ぶ先に取り分けて、持ち主に返す物から外します。
- 売れる物と売れない物に分ける着物、カメラ、貴金属、時計、家電、美術品、古書、ピアノ、家具などが例に挙がっています。
- 処分、撤去する処分する物は、許可を持つ業者に任せます。
出典:日本司法書士会連合会「空き家内の残置物のリユースに関する司法書士の取組み」(環境省 リユース促進に向けた懇談会 第2回資料・令和7年3月14日・2026年11月4日に確認)。
順番が大事なのは、片付けを先に始めてしまうと、売れる物がごみと一緒に出てしまうからです。
私がいた会社では、片付けだけなら3LDKでも4LDKでも、朝から夕方まで3人ほどで1日で終わりました。
それでも、買取の品をきちんと見つけるために、仕分けにもう1日かけました。買取の品を見つける日が先、片付けがその後、という流れです。
売却を急ぐ案件では、この1日を取れないこともあります。
その時は、現場で値段を決めず、写真だけ撮って持ち帰る方法があります。写真で専門業者に値段を聞く方法は、5章に書きました。
4作業代と買取額を分けて見せる
依頼者は、片付けの総額だけを見て判断します。
買取額が作業代の中に混ざっていると、「何がいくらで売れたのか」が見えず、不信感のもとになります。
作業代と買取額は、別の紙に分けて書きます。差し引きの金額は、最後に1行で出します。
| 書類 | 書く |
|---|---|
| 作業の | 仕分け、運び出し、処分(許可業者の分)を、項目ごとに。量と作業人数も書く |
| 買取の | 品物ごとの名前と買取額。相手の確認と、帳簿に残す内容に対応させる |
| 最後の | 作業代の合計から、買取額の合計を引いた金額を1行で |
私がいた会社が公開している実例でも、売った分だけ処分品が減り、回収費が下がる、と説明されています。
買取の品を抜くと、依頼者の負担が下がる理由が、数字で見えるようになります。
値段のつく物とつかない物
依頼者は、どれが売れて、どれが処分になるかを知りません。
見積もりの前に、次の目安を伝えておくと、期待のずれが減ります。
| 値段がつきやすい | 値段が |
|---|---|
| 貴金属、ブランド品、カメラ、管楽器(サックスなど)、有名作家の骨董 | 家電(5年以内の新しい物が中心)、家具(有名なブランドを除く) |
| レコード、CD(高くはつかない) | 着物(期待されても、つかないことが多い) |
| ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、シャネル(CHANEL)、エルメス(HERMÈS)、バーバリー(BURBERRY)などのトップブランド | 毛皮(買った時の10分の1、20分の1もつかないと見ておく) |
出典:佐野真が買取の現場で見てきた内容の整理(2026年11月4日時点)。品物と状態で変わります。
5現金や通帳が出た時と、買い取った後の売り先
片付けの途中で、通帳や現金が出てくることはよくあります。
見つけた時は、作業を止めて、見つけた場所と日時を写真に残し、売主か相続人に伝えます。
驚かれることがとても多いので、立ち会いの上で渡す形にします。
相続の物件なら、現金も通帳も相続財産です。見つけた人が分けたり、預かったままにしたりしません。
特殊清掃やごみ屋敷の現場でも同じです。扱いの詳しい書き方は、清掃・特殊清掃の会社の記事に書きました。
買い取った物の売り先
買い取った後の売り先は、大きく3つあります。
| 売り先の持ち方 | 向く | 気を |
|---|---|---|
| 自分で | 品数が少なく、時間がある | 在庫と手間を抱える。目利きの力に左右される |
| 1社に | 決まった業者と長く付き合える | 相場が見えにくい |
| 何社かに | 品の種類が多い、高い物がある | 返事を待つ時間がかかる |
3つ目の方法のひとつが、査定お任せくん(当サイトの運営者が関わるサービス)です。
写真を送ると、専門業者の査定基準での値段が、基準内か基準外かの見立てと根拠つきで届きます。売るボタンを押した時だけ売ることになり、値段を見るだけでも使えます。
使えるのは、古物商の許可を持つ事業者です。登録の時に許可番号を入れます。
専門業者の営業時間内なら、受けるまで15分、値段まで15分が目安とされています。
出典:査定お任せくんの公開ページ satei-omakase.com(2026年11月4日に確認した表示)。月額6,980円(税別・ベータ版・先着30店・2027年6月30日までの申込)。見立ては専門業者の意見で、公式の鑑定や保証ではありません。
許可がない会社の順番と、1年の費用
古物商の許可がない会社は、次の順番で進めます。
- 古物商の許可を取る営業所のある都道府県の公安委員会に申請します。流れは古物商許可の取り方に書きました。
- 許可が取れたら、お任せくんに登録する登録には、古物商の許可番号と営業所の住所が要ります。
お任せくんの費用は、月額6,980円(税別)の12か月分で、約8.4万円です。依頼者の側に、成約の手数料はかかりません。振込は1回380円(税別)です。
この金額はベータ版の価格で、先着30店・2027年6月30日までの申込が対象です。見直す時は30日前に知らせ、合わなければ解約できます。
目利きを自分で身につけたい場合は、研修で学ぶ方法もあります。入口は買取を仕事にする人の入口にまとめています。
売り先の比較は、買取店の売り先の比較で詳しく書いています。
同じ区画には、解体の会社や遺品整理の会社、不用品回収の会社の記事もあります。全体は業種ごとの買取の始め方から読めます。
6よくある質問
不動産会社が売却前の残置物を買い取るのに、古物商の許可は要りますか?
売主から家財を買い取って売るなら、古物営業にあたるため、営業所のある都道府県の公安委員会の許可が要ります(古物営業法第2条・第3条)。
無償か引取料をもらって引き取った物を売るだけで、買い取りをしない場合は、通達で対象外とされる例があります。
迷う時は、営業所を管轄する警察署の生活安全課に聞きます。
残置物は、誰の同意を取って動かせばよいですか?
売主本人の物なら売主です。
相続した物件で、遺産分割がまだなら、相続財産は相続人の共有(民法第898条)なので、相続人全員の同意を書面でそろえます。
相続人が分からない時は、弁護士や司法書士に相談します。
作業代から買取額を差し引いて請求してもよいですか?
差し引く請求書の形が買取にあたるかは、警察庁の通達に直接の記載がありません。
作業代と買取額は別の紙に分けて書き、差し引きは請求書の最後に1行で出す形にすると、依頼者にも分かりやすくなります。
扱いに迷う時は、警察署に書面を見せて聞きます。
売却する家の中から現金や通帳が出てきたら、どうしますか?
見つけた場所と日時を写真に残し、その場で動かさずに、売主か相続人に伝えます。
相続の物件なら、現金も通帳も相続財産です。
作業を一度止めて、立ち会いの上で渡す形にします。
家電や家具は、買取に回せますか?
家電は新しい物(5年以内が目安)が中心で、家具は有名なブランドでないと値段がつきにくく、ほとんどは処分費がかかると見ておきます。
テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機は家電リサイクル法の対象なので、早めに手配します。







