「この荷物、もう要らないので、買ってもらえますか」
引越しの見積もりや当日の作業中に、お客様から出る声です。
運ぶ荷物の整理は、引越し業者の仕事の延長に見えますが、買取と処分は別の決まりで動きます。
この記事は、引越し業者が買取を足す時の当日の判断と、梱包前の確認、守るルールを説明します。
書いたのは、買取の現場で長く働いてきた私です。法律の部分は、条文と国の資料で確かめた内容だけを載せています。
1当日の判断|買う・預かる・案内する
引越しの当日は、時間が限られています。
査定にかかる時間は、数点なら慣れた人で5〜10分、品数が多ければ1時間以上です。引越しの作業を止めて、その場で全部を見ることはできません。
| 品物 | 当日の | 理由 |
|---|---|---|
| 金・ | 刻印(K18・K14・750・585など)と重さを、お客様の目の前で量れるなら、その場で値段を出せる | 金は売れる値段が決まっていて、重さと刻印で見立てがつく |
| ブランドバッグ、 | その場で値段を言わず、写真を撮って預かる | 間違えた時の痛手が大きい。基準内か基準外かは、写真で専門業者に聞ける |
| カメラ、 | 写真を撮って預かる | 値段がつく物がある。品を見て判断が分かれる |
| 家電、 | 買取にならない前提で、処分の方法を案内する | 家電は5年以内の新しい物が中心。家具は有名なブランドを除き、ほとんど処分費がかかる |
| 着物、 | 値段がつきにくいと先に伝える | 着物は期待されても、つかないことが多い。毛皮は買った時の10分の1、20分の1もつかないと見ておく |
出典:佐野真が買取の現場で見てきた内容の整理(2026年11月4日時点)。品物と状態で変わります。
預かる時は、預かり書を書いてもらいます。
連絡の方法と、何日以内に連絡するかを、その場で話します。私がいた会社も、そうしていました。
本物か偽物かは言いません。当社の査定基準で、基準内か基準外かと伝えます。
2梱包前に、取り分けて確認する
梱包が始まると、買取に回せる物も、貴重品も、段ボールの中に入ってしまいます。
見積もりの日か、梱包の前に、次の順番で確認します。
- 処分したい物を聞く見積もりの訪問で、お客様に「手放したい物」を聞きます。ここで聞かないと、当日になって荷物が増えます。
- 現金、通帳、貴金属は、お客様の手元に置いてもらう片付けの途中で、通帳や現金が出てくることはよくあります。見つけた場合は、その場でお客様に伝えます。驚かれることがとても多いので、毎回声をかけます。
- 買取に回す物を、別の箱に分ける運ぶ荷物と混ざらないように、取り分けて、写真を撮ります。
- 書面を渡す買い取る時は、売買の書面を渡し、8日以内ならクーリング・オフができることを説明します。
貴金属は、引越しの荷物に紛れやすい物です。
引越し業者が預かって運ぶのではなく、お客様が自分で持つ形に分けておくと、運んでいる途中の紛失の疑いも防げます。
3許可とルール|買取・訪問購入・処分は別
| やること | 必要な |
|---|---|
| お客様から | 古物商の許可。相手の住所・氏名・職業・年齢の確認と、帳簿の記載が要る(古物営業法 第3条・第15条・第16条) |
| 1回の | 相手の確認と帳簿の記載は免除。ただしエアコンの室外機や電線などは、金額にかかわらず対象 |
| お客様の | 特定商取引法の訪問購入。頼まれていない勧誘は禁止。査定の依頼を超えた勧誘も法に抵触する。書面の交付と、8日のクーリング・オフ |
| 家庭の | 市町村の一般廃棄物処理業の許可、または市町村の委託。古物商や産業廃棄物の許可では回収できない(環境省) |
出典:古物営業法(e-Gov法令検索)/警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」令和8年5月14日/消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問購入/環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」Q&A(いずれも2026年11月4日に確認)。
訪問購入では、勧誘の前に、買い取りの勧誘であることを告げ、勧誘を受ける意思があるかを確認します。
お客様が売る意思がないと示した後は、その場で勧誘を続けることも、後から改めて勧誘することもできません。
書面には、物品の種類、買取価格、代金の支払い時期、クーリング・オフの説明などを書き、赤枠の中の赤字で目立たせます。
家具や、持ち運びにくい家庭用電気機械器具、自動車、書籍などは、訪問購入の対象物品から除かれています(特定商取引法施行令 第34条)。
消費者庁のページには、御用聞き取引や常連取引など、一部の規定が適用されない取引も挙げられています。
見積もりの日に、こちらから「要らない物はありませんか」と切り出す場合がこれに当たるかは、判断が難しいので、消費者庁や都道府県の窓口に聞いて決めるのが安全です。
処分は、引越し業者の持つ運送の許可とは別の話です。
家庭の不用品を引き取って運ぶ作業は、市町村の許可を持つ業者に任せるか、お客様に市町村のルールで出してもらいます。
4運賃と買取額を分けて見せる
引越し代の中に買取額が混ざると、お客様には「安くなった」としか見えません。
何がいくらで売れたのかが見えないので、後から「あの時の値段は低かったのでは」という不信感が残ります。
運賃と買取額は、別の紙に分けて書きます。
| 書類 | 書く |
|---|---|
| 引越しの | 運賃、作業人数、梱包資材など |
| 買取の | 品物ごとの名前と買取額。相手の確認と、帳簿に残す内容に合わせる |
| 最後の | 引越し代から買取額を引いた金額を、1行で |
差し引く請求の形が、買い取りにあたるかどうかは、通達に直接の記載がありません。
迷う時は、営業所を管轄する警察署の生活安全課に、書面の見本を見せて聞きます。
5預かった物の売り先と、使い始める順番
写真で預かった物は、専門業者に値段を聞きます。
査定お任せくん(当サイトの運営者が関わるサービス)は、写真を送ると、専門業者の査定基準での値段が、基準内か基準外かの見立てと根拠つきで届きます。
売るボタンを押した時だけ売ることになり、値段を見るだけでも使えます。使えるのは、古物商の許可を持つ事業者です。専門業者の営業時間内なら、受けるまで15分、値段まで15分が目安とされています。
出典:査定お任せくんの公開ページ satei-omakase.com(2026年11月4日に確認した表示)。見立ては専門業者の意見で、公式の鑑定や保証ではありません。
許可がない会社の順番と、1年の費用
古物商の許可がない会社は、次の順番で進めます。
- 古物商の許可を取る営業所のある都道府県の公安委員会に申請します。流れは古物商許可の取り方に書きました。
- 許可が取れたら、お任せくんに登録する登録には、古物商の許可番号と営業所の住所が要ります。
お任せくんの費用は、月額6,980円(税別)の12か月分で、約8.4万円です。依頼者の側に、成約の手数料はかかりません。振込は1回380円(税別)です。
この金額はベータ版の価格で、先着30店・2027年6月30日までの申込が対象です。見直す時は30日前に知らせ、合わなければ解約できます。
目利きを自分で身につけたい場合は、研修で学ぶ方法もあります。入口は買取を仕事にする人の入口にまとめています。
写真なら、見積もりの日に撮っておけます。
売り先の比較は買取店の売り先の比較に書きました。
同じ区画には、不用品回収の会社や便利屋の記事もあります。全体は業種ごとの買取の始め方から読めます。
6よくある質問
引越し業者がお客様の不用品を買い取るのに、許可は要りますか?
買い取って売るなら古物商の許可が要ります(古物営業法第3条)。
引き取って捨てる作業は、家庭の物なら市町村の一般廃棄物処理業の許可が別に要り、古物商の許可では回収できません(環境省)。
引越しの見積もりの日に、お客様の家で買い取ってもよいですか?
お客様の家で買い取る取引は、特定商取引法の訪問購入にあたります。
お客様から頼まれていないのに勧誘してはいけず、査定の依頼を超えて勧誘することも法に抵触します。
売買の書面を渡し、8日のクーリング・オフを説明します(消費者庁)。
引越しの当日に、その場で値段を決めてよいですか?
金の刻印と重さを目の前で量れる物のほかは、当日に決めない方が安全です。
時間が限られる当日は、写真を撮って預かる形にして、後で専門業者に値段を聞きます。
数点でも慣れた人で5〜10分、品数が多いと1時間以上かかります。
家具や大型の家電も、訪問購入の書面が必要ですか?
自動車、家具、携行が容易でない家庭用電気機械器具、書籍などは、訪問購入の対象物品から除かれています(特定商取引法施行令第34条)。
ただし、買い取って売る古物商の許可と、相手の確認の義務は別に残ります。
買取額は、引越し代から差し引いてもよいですか?
差し引く形が買取にあたるかは、警察庁の通達に直接の記載がありません。
運賃と買取額は別の紙に分けて書き、差し引きは最後に1行で出す形にします。
扱いに迷う時は、警察署に書面を見せて聞きます。







