「金のインゴットを持ち込まれたが、中まで確かめる機械がない」。
金・地金の買取では、こういう場面が実際に起こります。
この記事は、私が現場で見てきたことをもとに、金・地金で迷う場面と、店の動き方を書きます。

買取店は、本物か偽物かを断定する立場にありません。
この記事でも、店の査定基準で「基準内」「基準外」という言い方を使います。

1金・地金で迷う4つの場面

金・地金の持ち込みで迷う場面は、大きく4つに分かれます。
品物の見た目が金でも、中身まで金とは限りません。

場面何が起きているか主に見る所
中に別の金属が入っている外側は金で、中にタンタルなどを入れてかさ増しした物表面・試金石・インゴットはX線
金メッキ・金張り表面だけに金がついている物。刻印はGP・GFなど刻印の最後の文字・試金石
刻印だけが本物に見える刻印は読めるが、材質の裏づけにならない物刻印と表面・試金石を合わせる
インゴット刻印や外観は整っているが、中身が見えない物X線の検査・購入証明書の有無

出どころ:目利き一郎の整理。刻印の読み方の基本は金を売る前に確かめることに書いています。

ブランドバッグほど偽物が多いわけではありません。
ただ、最近は金・地金でも、こうした持ち込みが増えてきました。

2見る所は表面・試金石・刻印

金は、金の商品を触っていれば分かる、というのが私の実感です。
貴金属の買取としては、割と楽な方だと思います。
見る所は、次の3つです。

見る所分かることこれだけでは足りない理由
表面色の出方、擦れた所の下地、継ぎ目、仕上げの不自然さ外側が金なら、見た目は金のまま
試金石こすった跡と、液をつけた時の反応から、表面の金の度合いを見るこする所は表面で、奥は見えない
刻印K18・750・Pt900などの表示、製造元、重さ、シリアル番号刻印は、打てば入る

出どころ:目利き一郎の現場の経験。インゴットの刻印に、ブランドのロゴ・純度・重量・シリアル番号が入るとする説明は、大手買取チェーンの公式の購入ガイドにもあります(2026年10月31日に確認)。

金の比重(密度)は、室温付近で19.32g/cm³です。
重さと大きさが合うかは、手がかりの一つになります。
ただ、重さだけで決めることはしません。
金に近い重さの金属もあるからです。

出どころ:Wikipedia「金」の密度の記載(室温付近で19.32g/cm³・2026年10月31日に確認)。

刻印の後ろの文字も、毎回見ます。
K18GPのようにGPが付く刻印は、金メッキの表示です。GFは金張りです。
WGやYGなどは金の色の違いを表す文字で、無垢のこともあるため、別に見ます。

下の動画の題は、動画を公開した当時のものです。ここでは、店の査定基準で基準内・基準外と伝える言い方にそろえています。

動画で見る:【検証】メルカリの金塊は本物?偽物?プロが鑑定してみたフリマアプリで買った121gの金塊を、店で試金石とX線の検査にかけて確かめた記録です。刻印があっても本物とは限らない例です。リユース相談本舗TV(YouTube)・12分42秒

31gの相場が高いので、見落とした時の損が大きい

金・地金のミスが怖いのは、1gあたりの相場が高いからです。
同じ見落としでも、バッグ1個と、重さのある地金では、損の桁が変わります。

重さ相場だけで掛けた額
10g222,260円
100g2,222,600円
1kg(1,000g)22,226,000円

出どころ:田中貴金属工業の店頭買取価格(税込)1gあたり22,226円(2026年10月27日9時30分に確かめた値)に、重さを掛けた目安です。実際の買値は、店と日で変わります。

中身が金でなかったとき、損の大きさは、払った額で決まります。
だから、金は「触れば分かる」場面が多くても、研修が大事だと私は考えています。
実物を触って、見る所と順番を、手に入れておきます。

仕組みで防ぐ買取店の真贋判定|基準外の品をつかまない二重チェックの仕組み

4インゴットは、X線の検査が要る

インゴットは、表面と刻印が整っていても、中までは見えません。
インゴットは、見た目だけでは決められない品の一つです。
インゴットはX線を使う検査にかけます。

公的な資料にも、同じ考え方があります。
税関の研究報告は、金製品の表面を別の金属で厚く覆った場合、蛍光X線の表面の分析では内部の金が検出できなかったことを述べています。
内部の確認には、X線検査装置を簡易の確認として使っています。
鉛のように金と近い金属は、X線でも区別が難しいともあります。
表面の分析だけで、中の構成まで分かるとは限りません。

出どころ:関税中央分析所報 第57号「金製品の鑑定について(第2報)」(東京税関・2026年10月31日に確認)。金を内部に隠す向きの事例を扱った報告で、金の偽物の中身を調べる検査そのものの話ではありません。

問題は、X線の検査機が高価なことです。
どの店にも、あるわけではありません。
私はこれが、金・地金の判断で一番の問題だと考えています。

検査機が店に無い時の選び方

機械がない店には、次の4つの動きがあります。
どれを選ぶかを、持ち込まれる前に決めておきます。

動き向く場面残る手間
買わない刻印がない、出どころが言えない、検査できないお客様への伝え方を決める
預かって検査できる所に回す購入証明書があるなど、出どころが追える高額品預かり書、連絡の約束、日数
購入証明書・品質保証書と照らす国内の地金で、証明書とシリアル番号がそろう書類の本物らしさは、別に確かめる
専門業者に見立てを聞く店の経験の外にある品見立ては意見で、買うかは店が決める

出どころ:目利き一郎の整理。刻印のないインゴットは製造元や純度を証明できず、追加の検査が要るため、査定額が下がる・断られることがある、とする説明が大手買取チェーンの公式の購入ガイドにあります(2026年10月31日に確認)。

預かる時の書き方は、基準外の品をつかまない二重チェックの仕組みで説明しています。
不正品の疑いがあるときは、古物営業法第15条第3項で、古物商が直ちに警察官へ申告することになっています。

出どころ:古物営業法 第15条第3項(e-Gov法令検索・2026年10月31日に確認)。

動画で見る:金の本物と偽物、プロは見抜けるか?抜き打ちテスト金に似たタングステンの偽物を、店の人が見分けられるかを試した動画です。本物と偽物の違いも説明しています。リユース相談本舗TV(YouTube)・7分37秒

5お客様には、基準外と伝える

金・地金でも、お客様に「偽物です」とは言いません。
「当社の査定基準で基準外でした」と伝えます。
理由が、中身なのか、メッキなのか、検査ができないためなのかは、分けて伝えます。

私は長く買取店を運営してきて、「基準外です」と言って揉めたことは一度もありません。
言葉の意味は基準内・基準外とは何かで説明しています。

6よくある質問

インゴットの偽物は、買取店でどう確かめますか?

表面と刻印を見て、試金石を使い、インゴットはX線を使う検査にかけます。
X線の検査機は高価で、どの店にもあるわけではありません。
設備がない店は、買わない、預かって検査できる所に回す、のどちらかを先に決めておきます。

金に刻印があれば、本物と言えますか?

言えません。
刻印は、打とうと思えば打てるためです。
私は刻印を、表面と試金石と合わせて見る手がかりの一つとして扱います。
K18GPやGFのように、メッキや金張りを表す文字が付く刻印は、無垢とは別の物です。

金の中にタンタルなどを入れた物は、重さで分かりますか?

重さ(比重)は手がかりの一つですが、それだけでは決めません。
金に近い重さの金属もあるためです。
表面・試金石・刻印を合わせて見て、インゴットはX線の検査も使います。

金の買取で、なぜミスの損が大きいのですか?

1gあたりの相場が高いためです。
田中貴金属工業の店頭買取価格(税込)は、2026年10月27日の9時30分時点で1gあたり22,226円でした。
1kgのインゴットなら、掛け算だけで2,000万円を超えます。相場は日で変わります。

金・地金の査定は、研修を受けないとできませんか?

触っていれば分かる場面は多いのですが、中に別の金属を入れた持ち込みが増えているため、私は研修が大事だと考えています。
実物を触って、見る所と順番を身につけます。