「母の指輪や着物を、きょうだいでどう分ければいいのか」
「形見にするか、売るか、家族の意見がそろわない」
この記事は、そんな時に、家族でもめにくい順番を決められるように書いています。
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相続の話は、民法と国税庁の案内で確かめた範囲だけを書いています。
個別の事情で結論が変わるため、言い切らず、専門家に相談する場面も示しています。
1形見分けと遺産の分け方は別
形見分けは、故人が愛用した品を、思い出として親族や親しい友人に贈ることです。
民法の条文に「形見分け」という言葉は見当たりません。
決まった形のある制度ではなく、慣習として行われています。
| 形見分け | 遺産分割 | |
|---|---|---|
| 意味 | 思い出の品を贈る慣習 | 相続財産を相続人で分ける手続き |
| 決め方 | 決まりはない。家族で話し合う | 相続人の協議。まとまらなければ家庭裁判所に請求できる(民法第907条) |
| 価値のある物 | 勝手に分けられない | 相続財産として扱う |
民法は、相続人が複数いる時、相続財産は共有になると定めています(第898条)。
相続の財産には、現金や不動産だけでなく、家の中の物も含まれます。
価値のあるブランド品などは、思い出の品であっても、相続財産として扱われます。
遺言書がある場合は、分け方がそこに書かれていることがあります。
封のしてある遺言書は、勝手に開けません。家庭裁判所で、相続人の立ち会いのもとで開封します(民法第1004条)。
2形見分けはいつ行うか
形見分けの時期は、法律で決まっていません。
ただ、ほかの手続きの期限と重なるため、次の表の順に考えると安全です。
| 時期 | 意識すること |
|---|---|
| 亡くなってすぐ | 遺言書の有無を確かめる。遺品は、まだ誰の物とも決めない |
| 相続を知ってから3か月以内 | 相続放棄や限定承認ができる期間(民法第915条)。放棄を考える間は、渡す・売る・捨てるを待つ |
| 四十九日法要(仏式)や五十日祭(神式)のあと | 形見分けは、この区切りのあとに行うことが多いと紹介する解説がある。公的な根拠は確かめられなかった |
| 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税の申告が必要な場合の期限(国税庁) |
つまり、形見を渡すのは、遺言と相続放棄の確認が済み、分け方の話がついてから、が安全です。
急いで渡すより、先に全員で確認する時間をとるほうが、あとでもめません。
3家族でもめない順番
- 遺言書と相続放棄を確かめる遺言書の有無を探します。相続放棄を考えている人がいれば、その人が決めるまで待ちます。
- 全員に連絡して、一覧を作る遠くの家族にも伝えます。形見にしたい物を、1人ずつ聞いて書き出します。
- 写真に撮って、共有する実物を送らなくても、写真で全員が同じ物を見られます。
- 値段が分からない物は査定に出す貴金属・時計・ブランド品・着物・骨董などは、価値を知らずに分けると、あとで不公平感が残ります。複数の店で見てもらい、結果を全員に伝えます。
- 形見にする・売る・処分するを決める全員が了承した物だけを動かします。一部の人だけで決めません。
- 売る場合は、代金の分け方を先に決める売ったあとで分け方を決めようとすると、もめやすくなります。
- 決めたことを、メモか書面に残す誰が何を受け取ったか、日付つきで残します。
もめやすいのは、誰かが先に持ち出す時、価値を知らずに分けて不公平になる時、売った代金の行き先が決まっていない時です。
この順番は、その3つを避けるためのものです。
実家の片づけの現場では、きょうだいで通知表や、お父さんが趣味で書いた掛け軸を前に、思い出を話し合う場面があります。
値段がつくかどうかと、残したいかどうかは、別の話です。
値段がつかなくても、家族にとって残す価値のある物は、先に選んでおいてください。
4形見にするか、売るか
| 決め方 | 向く物 | 先にすること |
|---|---|---|
| 形見として残す・渡す | 思い出の強い物、使い続けたい物 | 価値が分からない物は、渡す前に査定で値段を知り、全員に伝える |
| 売る | 使う人がいない物、値段がつく物 | 相続人全員の了承と、代金の分け方の決定。相続放棄を考える人がいれば待つ |
| 処分する | 値段がつかず、誰も使わない物 | 全員が確認してから。捨てたあとは取り戻せない |
査定を受けただけでは、売ったことにはなりません。
ただし、品物を店に預ける、宅配で送る、という場合は、売るかどうかの判断を全員で確かめてからにしてください。
買取店の現場では、どの物が売れて、どの物が処分になるかを、お客様が見分けるのは難しい、とよく感じます。
貴金属やブランド品は値段がつきやすい一方、木箱入りの掛け軸や茶器、昔高かった毛皮や洋服は、思ったより値段がつかないことがあります。
だからこそ、分ける前に査定を受けておくと、期待とのずれを減らせます。
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5税金と相続放棄の注意点
| 場面 | 国や条文が示していること |
|---|---|
| 相続税の対象 | 国税庁は、相続や遺贈で取得した財産に相続税がかかるとし、対象として現金・預貯金・有価証券・宝石・土地・家屋などを挙げている |
| 相続税がかかるか | 基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。遺産の合計がこれを超えるかが目安になる(国税庁) |
| 家財道具の評価 | 財産評価基本通達は、家庭用動産で1個または1組が5万円以下の物は、一括して一世帯ごとに評価できるとしている。高価な物は個別に評価する |
| 売った時の所得税 | 国税庁は、家具・衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得は課税されないとする。ただし貴金属・宝石・書画・骨とうで、1個または1組が30万円を超える物は除く |
| 相続放棄との関係 | 相続財産の一部でも処分すると、保存行為などを除き、単純承認とみなされる(民法第921条)。放棄は家庭裁判所に申し出る(第938条) |
弁護士JP編集部の解説(2024年2月19日公開)では、写真・手紙・使い古した衣服のような数千円程度の物なら、相続放棄に支障はないと考えられている、とされています。
一方、自動車や高価な宝飾品は、遺産の一部として扱う必要があるとされています。
どこまでが問題にならないかは、法律に数字の線引きがあるわけではありません。
迷う物は、受け取る前に、弁護士や司法書士に確かめてください。
形見を相続人以外の人に渡す場合の税金は、品物の価値で変わります。
この点は、税理士に確かめるのが確実です。
6よくある質問
形見分けは、いつ行えばいいですか?
法律で決まった時期はありません。
遺言書と相続放棄の確認が済み、分け方の話がついてからが安全です。
四十九日法要や五十日祭のあとに行うことが多い、と紹介する解説もあります。
遺産分割の前に、形見を持ち帰ってもいいですか?
価値のある物は、相続財産として扱われるため、1人の判断で持ち帰らないでください。
全員に伝えて了承を得てから、受け取ります。
形見分けに、相続税はかかりますか?
相続税がかかるかは、遺産全体の金額が基礎控除を超えるかが目安になります。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
宝石のような価値のある物は、遺産に含めて考えます。
形見を売ったお金は、誰の物になりますか?
相続財産の一部を売った代金は、相続人全員で分け方を話し合うのが基本です。
売る前に、代金の分け方を決めておくと、あとでもめません。
判断に迷う時は、弁護士や司法書士に相談してください。
相続放棄を考えていますが、形見を受け取ってもいいですか?
相続財産を処分すると、相続を認めたとみなされるおそれがあります(民法第921条)。
受け取る前に、弁護士や司法書士に相談してください。
出どころ:e-Gov法令検索「民法」第896条・第898条・第907条・第915条・第921条・第938条・第1004条/国税庁タックスアンサー No.4105・No.4152・No.4205・No.3105/国税庁 財産評価基本通達 第128項/弁護士JP「形見分けと相続放棄」(2024年2月19日公開)/大和証券の用語解説「形見分け」(いずれも2026年10月27日に確認)。形見分けの時期は、公的な出どころでは確かめられませんでした。値段がつく物とつきにくい物は、買取店の現場で見てきた傾向です。






