「鑑定士になるには、何から覚えればいいのか」
「ロレックスの型番を、全部暗記しないといけないのか」
買取店で働きたい方が、いちばん不安に思うのは、目利きの身につけ方です。
ここから、私が最初に覚えたこと、今は覚えなくなったこと、今も変わらないことを順に書きます。
本物かどうかを決める立場に、買取店はありません。
ここでも、「その店の査定基準で基準内か、基準外か」という言い方で書きます。
1昔は、名前と型番を1つずつ覚えた
私が始めた頃は、品物の名前を覚えるところからでした。
ルイ・ヴィトンのバッグなら、モノグラム、ダミエ、エピといったシリーズ名です。
ロレックスなら、型番の意味です。
69173、169173、79173、16233のような番号は、末尾の数字で、素材の組み合わせ(ステンレスと金のコンビなど)まで読み取れます。
これを1つずつ、頭に入れていきました。
覚える量は多く、新しいモデルも次々に出ます。
ここで挫折する人が、少なくありませんでした。
2いまは、品名を覚えなくていい
今は、Googleレンズなどが発展したので、スマホで撮れば、型番や商品名の手がかりがすぐ得られます。
私は、今の人には、品名の暗記は要らないと考えています。
| 項目 | 昔 | 今 |
|---|---|---|
| シリーズ名・商品名 | 頭に入れた | スマホで撮れば手がかりが出る |
| ロレックスの | 1つずつ暗記した | スマホで撮れば手がかりが出る |
| 本物の | 触って覚えた | 今も、触って覚える |
| 金具・ロゴ・縫製・匂い | 目と鼻で確かめた | 今も、目と鼻で確かめる |
出どころ:目利き一郎が現場で体験したこと。スマホで分かる範囲は、品物と写真の状態で変わります。
ただ、スマホが教えてくれるのは、品名と型番の手がかりまでです。写り方や品物によっては、出ないことも、違うことも出ます。
その品が自店の査定基準で基準内か、基準外かは、スマホには決められません。
そこは、人の手と目の仕事として残ります。
3本物をたくさん触ると、手が弾く
私が新人の頃に教わったのは、「本物をいっぱい触れ」でした。
今でも、その通りだと感じています。
本物を何度も触っていると、基準外の品を持った瞬間に、ほんのわずかな違和感が走ります。
「あれ、なんか軽い」
「金具の音が違う」
偽物が来た時に、手が自然と弾く感覚です。
この「なんか」を言葉にするのが、研修の役目です。
経験を積んだ査定の人は、手に取った瞬間に「違う」と感じますが、それは才能ではありません。
比較と観察を積み重ねた結果で、感覚は鍛えられます。
技術は、続けた人にしか、微笑みません。
金や地金も同じです。
金の商品を触っていれば、分かるようになります。
ただし、1グラムあたりの値段が高いので、見間違えた時の損が大きくなります。
だから、研修は大事です。
4ルーペで見る4つの所
触る感覚に加えて、ルーペで見る所があります。
| 見る所 | どう |
|---|---|
| 金具 | 見た目に加えて、動かした時の音も聞く。怪しい所があれば、私はその時点で基準外と見る。基準は店ごとに違う |
| ブランドの | ルーペで拡大して見る |
| 縫製 | ルーペで拡大して見る |
| 匂い | 鼻で確かめる |
出どころ:目利き一郎が現場で使ってきた見方。見る所と基準は、店ごとに違います。
金具以外は、一つの所だけで決めず、全体を見て判断します。
ロゴ、刻印、縫製、素材、匂いを、まとめて見るということです。
基準は、店ごとに違います。
エルメスが難しいと言う人もいれば、ヴィトンが難しいと言う人もいます。
簡単だと感じる品も、人によって別です。
最近は、スーパーコピーと呼ばれる偽物の精度が上がっています。
古い品は、すぐ分かることが多い一方、新しい物は精度が上がっているので、見る所を学び続けます。
5迷った時は、違和感を大事にする
基礎知識があった上で、少しでも違和感があれば、自分の感性を大事にします。
その時に、先輩に聞けるのが、店で働く強みです。
1人で悩まず、先輩に見てもらい、「どこが違うのか」を言葉にしてもらいます。
これを重ねると、自分の中に基準ができます。
買えない品を断る時は、「偽物です」とは言いません。
「当社の査定基準では基準外でした」と伝えます。
長く買取店に関わってきて、「基準外です」と言って揉めたことは、一度もありません。
6実物に触れる場を、どう作るか
本物と基準外の品を、並べて触って比べる機会は、独学では作りにくいです。
そういう場は、研修で学べます。
研修では、「なんか」の正体を、見る順番として教えてもらえます。
働きながら学ぶ道もあります。
買取店に入ると、毎日、品物に触れ、先輩に聞きながら、比較と観察を重ねられます。
買取店で働く全体の様子は、次の記事に書きました。
7よくある質問
ロレックスの型番は、覚えないといけませんか?
今は覚えなくていいです。
Googleレンズなどで、スマホで撮れば、型番や商品名の手がかりが得られます。ただし出ない時や、違う時もあるので、刻印や実物と見比べます。
覚える時間は、本物に触れる時間に使います。
目利きは、才能がないと身につきませんか?
才能ではありません。
本物を何度も触り、比べて観察を積み重ねた結果です。
感覚は鍛えられます。
偽物かどうかは、どこを見て決めますか?
金具、ブランドのロゴ、縫製、素材、匂いを、ルーペなども使ってまとめて見ます。
金具に怪しい所があれば、私はその時点で基準外と見ます。基準は店ごとに違います。
買取店は本物かどうかを決める立場にないので、「当社の基準で基準外」と伝えます。
迷った時は、どうすればいいですか?
基礎知識があった上で、少しでも違和感があれば、自分の感性を大事にします。
先輩に見てもらい、どこが違うのかを言葉にしてもらいます。
実物に触れる機会は、どこで作れますか?
買取店で働く、または研修に出る、の2つの道があります。
どちらも、品物に触れて比べられる場です。